【緯度経度】ソウル・黒田勝弘 靖国、キムチ、日本海…
2009年08月15日 産経新聞 東京朝刊 国際面

 韓国の8月15日は日本支配からの解放を記念する「光復節」で祭日。今年の対日雰囲気を探ってみた。

 国際的に話題になった中国人監督のドキュメンタリー映画『靖国』が8・15に合わせ韓国でも上映されている。ソウル中心街のソウル歴史博物館横の映画館で見たが、120席に客は5人。2時間の長編に、最後まで座っていたのは筆者を除き1人だけだった。

 左派系メディアは「手厳しい批判を期待した人は失望するかもしれない」(10日付、ハンギョレ新聞)といい、客の入りの悪さを嘆いていたが、不人気は反日不足のせいか?

 ただ反日メディアの期待とは別に、あの映画は「日本人の靖国への思い」をかなりよく伝えている。批判、非難ばかりの“反日原理主義”で実際を知らされていない韓国人には、むしろ見てもらっていい映画だ。

 次に、8・15を前にしたテレビの朝のニュースショーにはかなり“反日”が登場している。たとえばまず“キムチ”騒ぎ。

 フジテレビ系の「とんねるずのみなさんのおかげでした」のコーナー「新・食わず嫌い王決定戦」に出演した韓流スターの鄭宇成(チョンウソン)が、番組でキムチのことを「kimuchi」と書いたといって問題になっている。

 キムチは韓国語の発音では正確には「kimchi」で国際的表記もそうなのに、「kimuchi」では日本製のキムチになってしまうというのだ。

 そこで「国際市場で韓国の本場キムチが日本製キムチに押されつつあるとき、日本のテレビで日本式に”kimuchi”とはケシカラン、非国民だ!」と、ネットやテレビで袋だたきとなった。 

 本人の「おわびの声明」で一件落着とはなったが、マスコミは「芸能人も韓国国民としてのしっかりした心構えを持て」としきりに説教している。

 一方、人気歌手の金長勲(キムジャンフン)は逆に反日愛国者として大いにほめられている。12日付の米ワシントン・ポスト紙に「日本海はない」「独島は韓国領」とする全面広告を出したからだ。

 この意見広告には「ワシントン・ポストのエラー」とでっかい見出しがついている。とくに同紙が記事で、島問題のほか日本海のことを韓国の主張である「イースト・シー(東海)」としてないのがケシカランというのだ。

 彼は近年、歌よりもこうした海外での反日愛国広告のための愛国募金活動で有名だ。

 いわゆる“反日4点セット”のうち教科書問題も登場している。最近、日本の「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書(自由社版)が横浜で採択されたため、マスコミは「歪曲教科書の採択拡大」などとイラ立っているのだ。

 例によって日本批判が中心の自分たちの歴史観に合わないとみんな「歪曲(わいきょく)」だ。韓国内では自国の歴史について左派的な“自虐史観”を正そうという動きが活発だが、日本の多様な歴史記述は認められないという。韓国マスコミの“ジコチュウ(自己中心主義)”は相変わらずだ。

 もう1つ「慰安婦問題」は8・15の“反日定番”だ。今年も日本大使館前の慰安婦デモの写真がマスコミを飾っているが、今年は米議会での日本非難決議を主導した“ヒーロー”のマイク・ホンダ下院議員が訪韓し人気を呼んでいる。「在米韓国人高校生たちが米ニュージャージー州に慰安婦記念碑」などという話も大きく報道されている。

 米国移民の韓国人およびその子女たちは、反日パフォーマンスで韓国人としての愛国・民族感情を満足させようというのか。それにしても韓国人がなぜ米国でしきりに反日なのだろう。これが日本人には切ない。

 しかし今年は例年になく8・15は静かなようだ。保守・実利主義政権のせいだろうか。あるいは何かと「騒がしい北朝鮮」のおかげか。李明博大統領の恒例の8・15記念演説も北朝鮮問題が中心になるという。