【書評】『日本人の歴史教科書』「日本人の歴史教科書」編集委員会
2009年06月21日 産経新聞 東京朝刊 読書面

 ■誇るべき文化 正しく伝える

 わが国は家庭も学校の現場も、そして社会全体も大きく乱れている。これを救うもの教育を措(お)いて他になしと考える私は、8社の教科書を詳しく研究してきた。そして教科書採択の実相も知り深く憂いてきた。

 平成18年、教育基本法の改正が60年ぶりに行われ、国の教育方針が大きく転換した。まさにその流れに沿うが如(ごと)くに『日本人の歴史教科書』が産声をあげた。

 立法後初めて作られた歴史教科書だけに期待は大きかった。しかも出版社「自由社」の社長と賢弟、加瀬英明氏が引き受けての決意を聞いて更(さら)に期待は膨れた。だが「新しい歴史教科書をつくる会」が筆者には理解出来ない学者たちの内紛を経ての「日本人の歴史教科書」の会でもあるので注意深くも読んだ。

 読み終わって、戦後初めて真の日本人が真の日本の歴史を綴(つづ)ったとの感が深かった。

 編集委員会の代表、藤岡信勝氏が「はじめに」で述べておられるように今迄(まで)の歴史教科書は余りに「自虐史観」にとらわれ歪(ゆが)んだ歴史表現が支配していた。何回もこの教科書を読みかえした。教科書としては贅沢(ぜいたく)すぎるカラー写真をふんだんに盛り込んで日本の文化の美しさ、誇るべき伝統文化を語っている。

 聖徳太子の記述も十七条憲法全文も盛られているし、随国の煬帝(ようだい)への手紙なども確(しか)と記されている。

 前大戦における悲劇王(ヒロイン)とも言うべき戦艦大和の映像と記録が載っている。3700名の乗員と共に東支那海に沈んだ歴史の事実は語らねばならない。戦時下あの巨艦を作りあげた日本の技術、既に巨艦時代が去り、敵機の集中攻撃であえなく沈んでいった事実は、平和に生きる今人(いまびと)に正しく伝えねばならない。

 歴史から学ぶ時の最も大切な心得は、限りなくその事実の起きた「時」「場」に身も心も置き換えて考える誠実さが求められていることである。

 その意味で「日本人の歴史教科書」は中学の歴史教科書というより全国民必読の歴史書と言うべきであろう。(自由社・1500円)

 評・中條高徳(日本国際青年文化協会会長)