「節目」「激動」平成20年 論説委員がもの申す(2−1)
2008年01月03日 産経新聞 東京朝刊 

 平成になって20年目を迎えた。北京五輪の年でもある。20年といえば、大きな節目の年といえる。内外とも激動の時代に入っている。なかなか先が読めない不透明感が漂う。米国では今秋、大統領選挙が行われる。すでに英国やフランスでは、指導者が交代し、隣国の韓国も新大統領が誕生するなど、世界の顔はがらりと変わった。北朝鮮の動向も気になる。本紙「主張」を担当する総勢30人の論説委員が、一言ずつ書き留めた。「平成20年に思う」

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 ■五十嵐徹

 地方の商店街は判で押したようにシャッター通り。地域格差は深刻度を増すばかりです。地方が元気にならねば日本経済の本格浮揚は望めません。そのための地方分権論議ですが、ねじれ国会で国政の停滞が気になります。子年の子は終わりの了と始まりの一の組み合わせ。輪廻(りんね)の中枢を意味する文字だとか。大山鳴動ネズミ一匹とならぬよう願いたいものです。

 ■石井 聡

 平成の世に入った年、自民党幹事長として政権を牛耳っていた「あの人」が、今年も政局の主人公。とっくに賞味期限切れになっていそうなものだが、昨年の辞任騒ぎでシールを張り替えると再び店頭に。それが通用するのは、ひとえに野党の人材不足。いまだに「恐怖症」が治らない与党にも原因。次世代の奮起を期待しつつ、また振り回されるしかないか。

 ■石井英夫

 この平成の20年間とは、一体何だったのか。ひとつかみでいってみれば、昨年8月に死んだ阿久悠さんの遺言にある。彼のラストメッセージは日本の社会が「湿り」と「暗がり」を失ったと指摘した。だから世の中がやたらまぶしく、カサカサに乾いてしまったのだと。なんとか今年はその二つを取り戻し、影とうるおいのある社会にしようじゃありませんか。

 ■石川水穂

 昭和の末、歴史教科書が政治的な圧力や外国の内政干渉を受ける不幸な事件が続いた。「侵略

進出」誤報事件や新編日本史・外圧検定事件だ。平成に入り、中国や韓国におもねる傾向はさらに強まったが、「新しい歴史教科書をつくる会」の登場などをきっかけに、その傾向に歯止めがかかった。極端な記述はなくなりつつある。この流れを大事にしたい。

 ■伊藤 正

 日中平和友好条約締結30周年の今年、国会議員の訪中ラッシュが予想されている。交流を活発にするのはいいが、相手は対日戦略を練り、したたかに国益を計算している国である。30年前とは中国自身も日中関係も一変したとはいえ、その点だけは変わっていない。日中条約の交渉史に学び、中国の対日戦略が何かを見極めた上で、乾杯してもらいたい。

 ■乾 正人

 竹下内閣末期に首相番記者となって20年。平成の永田町を見つめ続けてきた、といえば格好はいいが、紅顔の美少年?がメタボおやじになっただけ。政治の世界も進歩がない。平成の御代(みよ)に首相を務めた政治家は13人を数え、政権の平均寿命は1年半にも満たない。焦点は14人目が誕生するかどうかだが、勝負は秋にもつれ込みそう。永田町も「どげんかせんといかん」。

 ■岩崎慶市

 小泉純一郎氏が首相再登板。現実味のない初夢みたいだが、ポスト小泉の混乱する政策決定過程にそんなことを思う。

 欧米の改革ははるか先を行き、なお手を緩めない。背中には中国の手がかかり、そのうち抜かれる。なのに改革は止まったまま。ねじれ国会で身動きもとれぬ。未来を開くべき政治がその道を閉ざす。矛盾超克する宰相いでよ。

 ■河合雅司

 少子高齢化社会の到来が言われて久しいが、総人口に占める75歳以上の「後期高齢者」の割合がついに1割に達した。後期高齢者医療制度がスタートする平成20年は、今後の社会保障制度を占う節目の年となりそうだ。ただ、財源論ばかりでは解決は遠い。若い夫婦が子供を持ちたいと思える「希望社会」をどうつくるのか−といった議論も巻き起こしていきたい。

 ■木村良一

 フェンシングも剣道も間合いが大切だ。間合いとは相手との関係である。間合いを誤ると、致命傷を負う。演説で間の取り方がうまかった角さんは「人間は間だよ」が口癖だったそうだ。

 医療も同じ。医師と患者との関係が重要だ。インフォームドコンセント(十分な説明と同意)という言葉もある。信頼関係がしっかりしていれば医療事故も少なくなる。

 ■黒田勝弘

 日本での“韓流ブーム”は続いているのだろうか。しかし“米流”とか“欧流”とはいわない。古くから広く深く浸透しているため、今さらそういう必要もないからかな。“日流”はどうだろう。繊細、美しい、柔らか、整っている、安心、安全、清潔、信用、配慮、気配り、丁寧、親切…外での日本評価はきわめて高い。評価を裏切らないようにしたい。

 ■小林 毅

 社会保障、財政赤字、そして環境。バラ色ではない未来図が次々に描かれています。「何とかなるさ」の楽天的な考え方も通用するかどうか。

 ん? 未来だって? 私たちには「未来」でも、成長した子や孫には「生々しい今日」なのでは…。のんびりとはしていられません。今こそ問題を解決するため「大人の底力と根性」をみせようではありませんか。

 ■古森義久

 今年は日本が官民ともに外部世界に対し明確に、大胆に、自己主張をしていく年にしたい。慰安婦問題、南京事件、そして北朝鮮の日本国民拉致というような案件で日本の国民や国家の名誉や利害が傷つけられる場合、敢然と諸外国に対し反論し、抗議すべきである。その発言は昨年も一部で始まったようだが、今年は日本の本格的慣行として定着させたい。

 ■坂口至徳

 倫理問題を解決する世界初のヒトiPS(人工多能性幹)細胞が京都大学で開発され、夢の再生医療の実現が近づいた。生活習慣病につながる「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)を防ぐ大規模な特定健診・保健指導も準備に余念がない。

 一方で医師不足など難問は多い。健康で長寿な社会に向けての希望が持てる方策を探りたい。

 ■皿木喜久

 今年は『源氏物語』ができて1000年、京都を中心に、その千年紀が繰り広げられる。昨年は早々と挫折した通読に再度、挑戦してみたい。

 『源氏物語』だけではない。日本人の先祖たちは世界に誇れる「文化」を遺(のこ)してくれた。その素晴らしい遺産を見直すことこそ、日本人の文化力を甦(よみがえ)らせ、その「心の荒廃」から救ってくれる。そんな年にしたい。

 ■沢辺隆雄

 水泳金メダリストの北島康介選手(25)が小学校の卒業文集で書いた作文が話題になったことがある。最後の記録会で出したタイム「36・3」秒を題材に五輪出場の夢とともに、「速く泳ぐことだけでないことを知った」と学校生活の思い出を語った印象深い作文だ。学習指導要領改定など今年も教育の話題は多いはず。夢や勇気がわく学校、授業を。